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FG MAGAZINE

LIFESTYLE RENOVATIONインタビュー / 藤野・廃材エコビレッジゆるゆる

あなたはリノベーションという言葉を聞いて何を思い浮かべますか? ブルックリンスタイル、北欧デザイン、モダンテイスト。

最近の見た目のかっこよさや雰囲気を追い求めるリノベーションは、この言葉自体をパッケージのように型に当てはめ、張りぼてのように無機質な存在にしてしまったと感じます。

本来リノベーションはラテン語で「再び新しい状態になる」という意味。単なる住宅の改修だけではなく、そこに住む人の暮らしや人生が豊かになり、新たに文化を築き始めることが本来あるべきリノベーションであるとFIELDGARAGEは考えます。住環境や自身の働き方に再び向き合うことで人生のリノベーションが行われ、本質的な生活の豊かさが生まれます。

「LIFESTYLE RENOVATION」では、このように既存の形にとらわれない新しいスタイルの衣食住を実践している人たちにスポットライトをあて、彼らが暮らし方や働き方で何を大切にしているのかをインタビューすることで、人生のリノベーションとは何か?を考えるインタビューシリーズです。  

これからどう生きていくべきかのヒントを求めて藤野へ

今年3月以降、世界で猛威をふるっているコロナの影響で、世界はガラリと変わってしまいました。日本でも4月7日に緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出は避けるよう政府から要請がでている今日。これまでの私たち人間が疑いもせず行ってきた生産活動の概念が崩れつつあるなかで、これまでの暮らしから次のフェーズにリノベーションを行なっていく必要があります。

今回インタビューした神奈川県旧藤野町にある廃材エコビレッジゆるゆるは、もしかしたらこれからの暮らしのあり方を考えるにあたり参考すべき良事例かもしれません。今回は廃材エコビレッジゆるゆるの村長、傍嶋飛龍さんにお話をうかがい、彼自身の哲学や廃材エコビレッジゆるゆるの話を中心に、どのように現在に至るまで、暮らしのリノベーションを行なってきたのか、お話をうかがいました。 
パイプをくゆらせる姿が板についている飛龍さんはいつでもウェルカムな人だ

中山間の限界集落に存在する廃材エコビレッジエコビレッジゆるゆる

東京から車で1時間半ほどの場所に位置している神奈川県相模原市の緑区藤野地区。2007年に相模原市に統合する前は、藤野町という独立した町であり、約30年前から芸術で町おこしを行なっている。今ではアーティストのみならずトランジションタウンやパーマカルチャーといった農的暮らしをする人の移住も多く、独自の地域通貨が存在するなど自立意識の高い地域としても名が知れ渡っています。

その藤野の中心街を通過して、山の方に進んでいく。看板広告が少なくなり、杉林の山を越え、電波が繋がらなくなってきたところに廃材エコビレッジゆるゆる(以下ゆるゆる)があります。当日現地にいくと、ゆるゆるの建物の脇を流れる沢で、傍嶋飛龍さんと近所の子供達が砂場作りをしていました。飛龍さんに声をかけると、ニカっと歯を見せて笑いながら、こちらに手を振って迎え入れてくれました。

ちょうどお昼の時間で、沢から上がってきた飛龍さんたちは、ゆるゆるの工房内にある居間の円卓でお昼休憩。子供達が、最近はこういうことができるようになった、あれができるようになったとゆるゆるでの体験を誇らしげに話をする様子をニコニコしながら飛龍さんが聞く、そんな緩やかな日常がそこにはありました。ゆるゆるには独自の通貨「ゆーる」が存在し、これを介した地域内のコミュニケーションにより、年齢や性別など関係ない対等な関係を築いています。飛龍さんによると、ゆるゆるにあるものの99.9%が、誰かが使わなくなった廃材を譲り受けたもので、ゆるゆるのメンバー的存在である村民たちの表現の材料として使われるそうです。この日子供達が作っていた沢の砂場も、台風で沢に流れてきた砂場にちょうどいい砂と廃材としていただいた車のタイヤを使用していました。  
限界集落の廃工場をリノベーションしている。行くたび進化に目をみはる廃材エコビレッジゆるゆるの入り口。
すぐ傍で子供たちが遊び場「ヤンチャナ」を楽しみながら作っていた。

既存の社会的価値観から脱却し、ゆるゆると暮らす場を作った

良い暮らしのモデルをアートで表現していこうと話す飛龍さん、これまでどんな生き方をしてきたのでしょうか?

小学生のころから、先生の教えなど大人から聞く情報に疑問を抱きながら生きてきた飛龍さん。子供の時から右と左がわからなく、頭の中で答えを整理せずにぐちゃぐちゃにしている状態が楽しく、ひねくれた考え方で大人を困らせていたそう。この頃からすでに、従来のステレオタイプな考え方や答えの出し方ではなく、自分なりの方法やアプローチから答えを導いていく冒険心が大切だと考えていました。世の中は答えやゴールを求めがちだけど、アートには正しい答えはなく、人生そのもの。誰1人としてその行動を定量評価されるものではありません。自分の人生の答えを作り出すのは自分のみで、お金や成功といった外的要因は、執着心を作り出します。暮らしに価値を与えてくれるのはアートで、尊い時間の過ごし方を表現することが人生を豊かにしてくれると話します。

そんな飛龍さんですが、今に至るまで終始一貫してそう言った意識を持っていたわけではなく、社会のいろんなものに囚われていた時期もあったとのこと。美大生の頃は恐れや執着があり、不確かなものを大切に守っていることに苦しんでいたが、少しずつ心のなかにある違和感や恐れをみつけて問いを深めることが学びに繋がることを理解し、少しずつ壊しグセをつけていったそうです。「23歳のときに自分は死んだ。」と会話の中で、ぽつりと表現していましたが、社会的な価値観から脱却し、目の前で起きている事象や心の中で感じていることを味わい、学び、感じることに感情のあり方をシフトしていったそうです。そうやってその時々の状態を楽しむことが、飛龍さんの世の中に対する見え方を変えていきました。

そして3.11が発生。飛龍さんは本格的にエネルギーやお金という執着から脱却することで、社会の構造を考え直す必要があると確信。藤野の山奥で廃工場を見つけ即購入。万華鏡アーティストでもある自身のアトリエとして廃材を使ったセルフリノベ&増築をし、廃材エコビレッジゆるゆるをスタートしました。建物の修繕や施設増築に使っている材料の99.9%くらいは廃材でてきていて、電気の半分も自給、生活用水も水源を活用しているゆるゆるは、維持費の負担がほとんどないに等しい。金依存がなくなったらきっと多くの人が脱力して暮らしていけるはずという飛龍さんの想いのもと、生きていくために働くのではなく、ゆるゆるとしていても暮らしが成り立つデザインを構築し、今に至ります。  
コンポストトイレもアート作品だ
ステンドグラスも随所に施され、金属の小さな部品から何から何までアートの一部として存在する。

アートとは「今この瞬間、思考すること」

自身のライフスタイルやあるべき暮らしを語るとき、飛龍さんは「アート」という言葉をよく使います。飛龍さんにとってアートとはどんなものなのでしょうか?

飛龍さんによると「今この瞬間、思考すること」がアートだそう。身の回りの物事から大きな枠組みの話まで、常にどこかでありとあらゆるものに疑問をもって暮らしていくことで、この世界の感じ方や見方を変えていくこと。そしてより深い洞察を繰り返すことで、ライフスタイル全体がアートになっていく。そしてアートは情緒でもあるとも語ります。情緒とは、事に触れて起こるさまざまの微妙な感情、感受性のこと。それは常に今を生み出し続ける「いまここ」の状態であり、目に入るもの、気になっていることへの理解を深めていく過程でもある。岡潔(おかきよし)さんという数学者が情緒という言葉を多用しており、飛龍さんも彼の説く情緒に共感、人生のなかで持つべき視点として情緒を深めていくことが大切で、アートであると話します。

現代人が陥りやすい思考のパターン化によって、人々の暮らしや行きていく上での物事の捉え方は無意識のうちに社会の型にはまったものになっています。決まった道を歩むだけでなく、外れてみることでより多くの事象を見つけ、思考することで、人生そのものがアートになっていく。それを体現する場所としてゆるゆるがあるのです。

ゆるゆるには300人ほどの村民がいます。村民は地域内外から主に知人伝いにゆるゆるにきて、この場に共感した人たちである。村民はイベントを行なったり、五右衛門風呂や地熱冷蔵庫といったゆるゆるでの様々なものづくりの作業に加わったり、地域通貨「ゆーるコイン」を使って地域活性や人との繋がりを深めたりして過ごしています。
タイルのモザイクが可愛い五右衛門風呂。秋になると後ろのもみじが見事に紅葉する最高の景色。
コミュニティー通貨ゆーるはガチャガチャ方式で購入する。1回500円だが運が良ければ多く入っているという
法定通貨では考えられない価値観が楽しい。
近くの飲食店や物販店でも使うことができ、地域に浸透している。

ざっくばらんに話すことから相互理解を深めるゆるゆるカルチャー

様々な人がこの場にくると、村民同士の意識の分断が起こることはないのだろうか?どのようにお互いの理解を深めていっているかを飛龍さんに尋ねました。

何か問題が起こった時は、最初ざっくばらんに話そうというところから始めるそうです。話を真剣に聞いているうちにその人のバックボーンがみえてきて、相手に対して寛容になれる。そしてお互いに腹を割って包み隠さず話し合うことで、相手を理解でき、違いに優しくなれるそう。ゆるゆるはそもそも繋がりがある人が来る場所。ランダムに人がやってきて、みたいなことはなく村民を中心に自由に使っている、昔の寺みたいな場所だと話します。全てがオープンになってないからこそ繋がりが太くなるし、運命的に繋がっている人たちがそこで思い思いのゆるい時間を過ごせる、ゆるゆるはそんな場所をめざしています。
建物内部はあちこちから舞い込んできた廃材たちが息を吹き返し、
時代もわからない圧倒的なカオス空間にタイムスリップしてしまう。
あらゆる工具が揃い、ここに来るみんながクリエイターとなる。

暮らしをアートに、そして情緒を表現していく

ゆるゆるは、そもそもが飛龍さんのアトリエをコミュニティ化している場所なので、本人曰く、ある意味芸術作品として、自分の考えを実践していく場。村民や人がきても何もしない。本人たちの意思に任せて、自分たちがやりたいことをしてもらうことを目的にしているとのこと。ゆるゆるを入るとすぐにバーカウンターがあるが、飲み物も販売していないのだ。サービスをしないからお金は発生しない。お金から解脱することでゆるくいられる。そういう実験の場だと飛龍さんは語ります。そうやってどんどん日々の疑問を実験しながら、暮らしをアートにしていくのがゆるゆるの目的です。


持ち寄り分け合う文化
廃材ロボットのようなドネーションボックス。
本業は万華鏡作家。近くにある自宅に工房を構える。
白髪長髪のおじいちゃんになりきっている飛龍さん。これがライフスタイルの最終形態だ!(笑)
最後に飛龍さんに、自身が理想とする最終形態を教えていただきました。それはゆるゆるビレッジの庭にある椅子に腰掛けながら、「あーみんないいなー今日もいいなあ」と言って過ごすこと。ゆるゆるビレッジにくる人たちがそれぞれの情緒をゆるゆると表現している。それを眺めて晩年を過ごすことが夢だと目を細めながら空を仰ぐ飛龍さん。みんなが自分を表現できるようになる場としてこれからもゆるゆるは存在しつづけていくのでしょう。

text : 大山貴子

▼廃材エコビレッジゆるゆる
@eco.village.yuruyuru